創作相談板 記事No.6841
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Re: 事実と真実
- ◆ ルーキィ [6841] 08/04/07(月) 22:01
- こんばんわ。感受性がいまいち鈍い自分にはやっぱり上手く書けるかどうかわかりませんが……
村上春樹の『東京奇譚集』という短編集の中に『ハナレイ・ベイ』というお話があります。
鮫に足を食いちぎられ溺れ死んだサーファーの息子を想い、毎年ハワイのハナレイ・ベイへ赴く母のお話です。
詳しい内容は割愛しますが、近しい人の死を素直に嘆くことが出来ないという悲しさ、日々というものはこちらが悲しもうが笑おうが等しく繰り返されるけれど、ほんの少しのきっかけでその色は変わるのだという希望。逃れられない事、自分ではどうすることもできない事実に対する『赦し』が描かれていて、最後は暫く頁を閉じる事ができませんでした。
氏の作品は明確なオチらしきものを示さない場合が多いのですが、私はそれを『自分の都合の良いように解釈してもよい』という振れ幅なのだと受け止めています。(そうすると件のお話などは、私には癒しとなったけどある人にとっては無常観に繋がるかもしれないし、ある人にとっては何のこっちゃ分からない物語になるかもしれませんが)
私の場合、感じたり思ったりしたことを言葉にすることが非常に下手なので、自分が常々求めている説明しようのない情景や思考を描いてくれている本や物語に出合えたとき「読んでよかったなぁ」としみじみ思います。
例に挙げた本の場合、はっきり解が描かれていた訳ではありませんでしたが。変えようの無い『現在』という奴を赦してくれる優しさを文脈の間に感じ取る事が、私にとっての幸せな体験となりました。
思うに、誰しも欲求というか「感じたい」「知りたい」と思う情感を心に持っていて、それを満たしてくれるモノに出会えると言う事がひとつの『幸せ』なのではないでしょうか。本に限らず、キレイな空を見られたとか、素敵な音楽を聴いたとかそういうことも。感じ方の大小はあるでしょうが、そういうちょっぴり心が動く体験を求めて、私達は日々本や漫画を読んだり旅行をしたり音楽を聴いたりするのでしょうね。
もしかしたら全く的外れな事を言ってるかもしれませんが……私にとっての『幸福な経験』とはそういったものです。
それでは、失礼いたしました。
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