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創作相談板 記事No.6942

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ファンタジーの価値

JUN [6942] 08/08/29(金) 00:09
 皆さん、レスありがとうございます。

 そもそもこの問いかけの理由は、僕自身がファンタジーそのものに積極的な理由を見出せずにいることでした。しかし、そこを納得させてくれるような意見は、今この場では出ませんでした。

 あえて言うなら、樹さんの答えが、一番僕が欲しかったものに近いのでしょう。特に、ファンタジーでしか書けない純粋な気持ちがあるから、それを書くためにファンタジーがあるんだ。そういう純度の高い気持ちを書いたり、想像したいから、ファンタジーの世界に浸かる。
 これは、その通りだと思います。現実ではできないことができるということこそ、芸術が持つ最高の点の一つです。ファンタジーを書くことで、現実をぶっちぎりで超越した、純粋な何かを追うことが出来る、僕はそれを見過ごしていました。
 これはとても大切なことです。これを知っているかいないかで、時にはその人の人生さえ決まってしまうほどだと思います。だから、本当は、僕もファンタジーの価値を問われた時、それを声に出して言いたいくらいでした。アーチェに即して言うなら、誰かを大切に思い、再会を待ち望む姿の健気さ、またそれが報われる時の喜びというのは、百年姿を変えずに生き続ける彼女を書いた方が、より純粋な形で見出すことが出来ます。それは、現実の「ありえる」どんな人間を書くことよりも優れた方法なのでしょう。だから、アーチェを書くのだ、と。
だけど、それだけしかしない人間が、社会的にはどれくらいの物なのかと考える時、ファンタジーに耽溺することの罪みたいなものを感じてしまうのです。
高校を卒業する頃には、社会がそういう考えとは一つの線を引いた所で回っているのは大抵の人が分かってくると思います。僕は、そういう現実を見、そこで生きなければならないことを考える時、そこに無い気持ちを考えることになんか、どれくらいの意味があるのだろうか、と、どうしても考えてしまうのです。故に、僕の中では、例え純粋な気持ちが描けるとしても、それを描いたところでどうなるのかという考えが挟まれてしまい、樹さんの意見だけでは、どうとも自分を納得させることができませんでした。

 イルさんの意見について申し上げると、多分イルさんのおっしゃりたいことというのは、樹さんが指摘してくれたメリットと似ているのだと思います。ありえないことをありえないで終わらせない。想像し、その人を客観的に見た姿を描くこと、それによって、実物に対して共感できること以上の何かが生まれる。だから、ありえないことでも、ありえるように想像することが重要なのだ。これはその通りですが、僕自身は、そう考えようにも、既に上で樹さんに対して申し上げたことの様に、余計な考えが挟まれてしまって、それだけでありえないことの想定を肯定しきることができません。
 それと、客観的な姿について申し上げるのなら、何度か意見を読んで考えてみたのですが、ある人に共感して掘り下げて書いていった作品においても、第三者から見たその人の姿というのが大抵現れていると思います。小説において、誰かを想像し、共感して描くことというのは、同時にその人の客観的な姿、その人から伝わる第三者的な何か、つまりテーマのようなものを必然的に孕むと僕も考えています。自分の作品を振り返ってみる時にも、とにかく『……という人が書きたい』というつもりで書いた作品だって、そのものを見れば、『……という人』の姿を通じて、『〜ということ』というその人から離れた客観的な何かが見えてくると思います。だから、僕は別にその部分を大切にしていないわけではありません。

 飛鳥さんの意見は、折角書いていただいたのですが、まさにそういう方向性があるがゆえに、僕はファンタジーを逃げと感じてしまうのだ、と答えるしかないものです。
 基準が無いとか、現実の誰かから文句を言われたりしにくいとか、現実を経験しなくても書いてしまえるとか。書いている、読んでいる自分のどこかに、常にそういう考えを感じてしまうが故に、僕はファンタジーの世界を肯定しきれないんです。それくらいなら、少なくても知っている現実を継ぎ接ぎしたものに取り組んだ方が、書けることに制限はあっても、頑張って書いている様な気がしてしまいます。
 また、実際にはファンタジーをきちんと書く方ほど、作品内のリアリティを作り出すために必要な資料はきちんと集めたり、現実の史跡に取材したりというのを丁寧に繰り返している様です。だから、厳密には、基準が無いというのも実は結構いいかげんなもので、上を目指せば目指すほど、現実の神話や伝承、歴史、文化などに習熟しているかどうか、またそれらをうまく噛み含めて、お話として面白いものを作り出せているかどうかの両方が評価の焦点になってきます。その意味では、ファンタジー専門の読み手とかに読んでもらおうと思うなら、かなり厳密な基準がある様です。


 協力していただいた方、返信を頂いた方、全てにお礼を申し上げます。本当は、これだけの方に時間を取って書いて頂いたのだから、樹さんの意見を認めるだけにして、『疑う僕が間違っていました。皆さんありがとうございました、みんなその通りだと思います』という趣旨のレスを書く方が良かったのかも知れません。だけど、僕には妥協できませんでした。
 皆さんの中では、答えは出ているのかも知れませんが、僕にはまだしっくり来る回答が見つかりません。僕の中だけですが、この問題は保留ということで、お願いします。

 差し当たっては、僕の疑問にこんなに丁寧に答えてもらえる皆さんの存在を知れたのが、この記事を書いて得た最高の収穫です。
 それでは、この記事にお付き合いいただき、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。

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