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創作相談板 記事No.6946

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Re: 心に残った場面

◆ イコ [6946] 08/09/16(火) 23:33
こんばんわ。
私の場合心に残る場面……というと、大抵「きっと作者はこのシーンが書きたくて仕方なかったに違いない!」と思ってしまうので、どんなに枝葉の部分でも見せ場のように感じてしまいます……。
なので、重箱の隅に拘らず、自分的に印象に残った場面と言う事でお答えしようかと思います。

私にとっての心に残った場面のひとつは、宮本輝の『泥の河』の序盤のワンシーンです。
太平洋戦争の傷跡残る街に住む主人公の少年は、舟の家で暮らす姉弟と知り合います。少年も決して豊かな生活をしているわけではないけれど、川に浮かべた薄暗い舟の中で暮らす姉弟とその母の暮らしに触れ、なす術もなくどん底に生きるモノのかなしみを感じ取ったからでしょうか。
家の冷蔵庫からこっそり冷えたラムネの壜を持ち出し姉弟の元へ向かうのですが、結局ラムネは川に投げ捨て、姉弟には会わず家に帰ります。

上手に説明することができなくてもどかしいですが、少年のつたなさや澄んでいるのにどこか澱んだ色に染まる心、その時代に生きる人々の貧しさやささやかさといったものが皆この『ラムネ壜』に象徴されているような気がしました。たった数行のくだりですが、握り締める壜の冷たさや重さ、夏の日に照る輝きなどの情景も思い起こされ、個人的な名場面です。

物語自体が、少年の視線を通じて、貧しさの中で生きようとする人々の哀しみを描いているので、多分JUNさんの聞いておられるような『話の筋とそこまで関係しないような場面』ではないかも知れませんね……
どんな些細な場面でも、読み取り方によっては物語を象徴する場面となりますし、それを探し出すのもまた、お話を読む楽しみですよね。

無理矢理まとめてしまいましたが、ともあれそれがイコの個人的な名場面でした。
ではでは!

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