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創作相談板 記事No.7183

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Re: メタファーについて

JUN [7183] 09/04/09(木) 07:43
 お久しぶりです。最近めっきり忙しくなって、現れる確率は下がってるし、ホームページの更新すら思うように行きませんが。JUNと申します。

 ずいぶん前ですが、ブレイズさんのディスコ探偵の書評読みました。メタフィクション、ってやつなのかな。ブレイズさんが好きそうな話ですよね。機会があったら、読んでみたいと思います。

 さて、暗喩についてです。僕は小説においては、暗喩っていうのはどんな人も小説中で結構使ってるんじゃないかなあと思います。
 というのも、暗喩って結構分かりやすい形にできると思うんです。例えば、順風満帆の主人公に何か恐ろしいことや悲しいことが起こる。こういう時に、それまで天気が良かったのに、突然黒い雲が出て雨が降り出すなんていうのは、多くのお話でよくやられることだと思います。
 抽象的になりますが、全てのことが上手く行く場面で、晴れ上がったさわやかな空の場面を書いておいて、いきなり伝わった衝撃的な出来事の直後に現れる真っ黒な雲、落ちてくる大粒の雨――なんて書き方をすると良いんじゃないでしょうか。こういうやり方って結構皆やると思うんです。そして、読む側だって、こういう表現を見た時に、突然起こった恐ろしいことという感覚が、強調される場合もあるでしょう。このこと事体は、そんなに珍しくも無いんだと思います。そして、これも暗喩なんだと思います。

 暗喩が分かりにくい、って考える方が結構いらっしゃる様なんですが、僕は文章の暗喩っていうのは、結構分かりやすくすることができると思います。ブレイズさんの例で言えば、シャンデリアですね。ブレイズさんは映画の中で現れる暗喩としてのシャンデリアを例に挙げています。壊れやすいシャンデリアがはかないものであり、死の象徴表現になっているということでしょうか。ブレイズさんの言い方だと、それは映画、つまり映像中のシャンデリアなんです。でも、文章だったら、ここに主観というのか、それを見ている人の感想の様なものを挿入することができるんです。
 僕がシャンデリアを相棒の死の象徴として使うんだとしたら、そこに主人公の感想の様なものを入れます。一人称でも三人称でもある程度できると思います。どっちにしても、できるだけ詳細なシャンデリアの描写を入れて、それに対する主人公の感想の様なものをつけてみるんです。例えばこんなに綺麗で細かな物でも、床に落とせばそれだけで粉々に壊れてしまうんだ、という様なことを書いておきます。すると、読む人は、ああそういうこともあるよねと思ってくれるはずです。どちらにしても、命のはかなさ、存在の軽さっていうのか、そこに少しでも読み手をたどりつかせる様な工夫というか、細工をしておきます。
 すると、その後で突然起こった相棒の死というのが増幅されていくんだと思います。映像の弱点は、この主観性を持たせるのが難しい点だと思います。シャンデリアを映すとはいっても、それには限界があります。アングルの面白さ、画面の効果等でシャンデリアそのものの印象を増幅することはできても、それを死のイメージに直接誘導することが難しいのです。事実、ブレイズさんにはシャンデリアや桜が命のはかなさの象徴として飲み込めるのかも知れませんが、それは多分映像作品についてブレイズさんがたくさんチェックし、どうやらシャンデリアや桜について暗喩として使われているというのが分かるからこそなんだと思います。そうでない人は、例えば風伯 慧さんの様に、シャンデリアがそういう表現だったと初めて知った、というようになるんだと思います。
 もっとも、それが作品中でそう使われているんだと分からなくても、彼方さんの言う様に、雰囲気を何となく感じ取ることはできるのかも知れませんが。
 文章の場合は、何か匂わせる様なものをつけておくことができるし、例えそれをやっても、暗喩として認められるんじゃないかなというのが僕の認識です。風伯さんが例に挙げられた羅生門だったら、最後の一文は、『下人の行方は、誰も知らない』というものでした。確かに映像的には下人が闇の中へ消えていく所で終わるんですが、最後にこの一文が来ることによって、下人はこれから誰も知ることのない様な闇に入りこんでいくのだということが強調されます。そして、彼のこれからというのは、恐らくそういう決して明るくはないものなのだということが分かるんだと思います。こういうことが簡単にできる分、馴れてしまえば小説中で暗喩を使うのはそんなに難しくないんだろうな、と僕は思います。

 ちなみに、マジェで思い出した例は、旧投稿板の“ダオンドゥス”という人の作品です。作者一覧の一番左の列の、真ん中より少し下のあたりに名前があります。
 『一生のお願い』という作品なのですが、不貞、禁忌を犯すといった背徳的な感覚が、まさにその場面の只中において、黒い雲と降り出す雨の形で暗喩となっています。この場面でカメラをいきなり外に飛ばし、天候の崩れを入れる所は凄いと思いました。それが雰囲気を壊さず、むしろ場面を加速させている点なんかは、絶対に僕がやれないし、やってなかったことだな、という。
 ちなみに、ブレイズさんなら大丈夫かもしれませんが、ダオンドゥスさんの作品は結構独特で強烈です。世界観はこの人独自のTODとでも言いますか。僕は好きですが、もしよければチェックしてみてください。特に『ゴリラ物語』はお勧め。

 ちなみに、僕がメタファーをどう使えているかというと、あまり自信がなかったりします。『落ち着く所に』ではそれなりにやろうと思った様な形跡があるのですが、メタファーってあまり考えていませんから、僕はできるだけ説明しようとしてしまいます。場面を書いても、メタファーにはならず、結局説明してしまっている場合が多いようです。

 参考にもならない形で申し訳ありません。でも、メタファーって小説においても、結構有効だとは思います。少なくとも上に挙げた例は、十代の頃に一度読んだきりのものなのですが、メタファーときいて思い浮かびましたし。少なくともメタファーは二十三の僕の記憶にそれくらいの印象は刻み付けているんです。小説においても、隠喩はきっと、それくらいの力を持っています。そうでなかったら、国語でやらせないでしょうし。

 久しぶりに楽しい話ができました。機会を提供してもらってありがとうござ
います。

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